本の紹介  2019年8月9日|金曜日

読書感想文にもおすすめ『旅をする木』 そして『旅をする本』

国語の教科書(光村図書)には、小学6年生と中学3年生に、それぞれ星野道夫さんの文章が取り上げられています。

アラスカを拠点に、写真集や珠玉のエッセイを残した作家です。

 

さて、教養堂の棚からひとつかみ、今回はこちら。

 

『旅をする木』 星野道夫 著  文春文庫

 

星野道夫プロフィール

 

「旅をする木」

若い頃にアラスカの大自然とそこの人々の暮らしに魅了された著者は、現地に移住し、そこを拠点に森や川、動物たちと触れ合い、村の人々と交流します。

本書を読むと、いっきにアラスカの森の中の静寂が包み込むような感じがします。

朴訥とアラスカについて書かれている文章のリズムが、すでにアラスカの自然の息遣いなのです。

 

読書には、人それぞれのスピードやリズム感、タイム感を持って読まれるものだとは思います。

 

が、

 

例えば、経済効率から考えると一見、「速読」なる読み方が良いことのように言われますが、そんなに急いで読んだ気になって、それが何になるというのでしょうか。

 

丹精込めて作られた手作りの料理を、ファストフードのように食べて何になるのでしょう。

重厚で作り込んだ大作の長編映画を、早送りして見て何になるのでしょう。

 

全身全霊をかけて魂の言葉を原稿に書ききった文章を、どうして読み飛ばすことができましょうか。

 

本書は、星野道夫というアラスカに惹かれた一人の日本人の、ぽつぽつと奏でられる魂の言葉に、ぜひ身をゆだねてほしいですね。

そこにはアラスカの大地の鼓動と同じグルーブの時間が感じ取れるはずです。

 

「生き方の自己肯定感」

子どもたちは、大人にすごく影響を受けています。

良いことも悪いことも、合わせ鏡のように直接影響を受けます。

一元的で単発的な生き方しかないと大人が思っていれば、子どもに閉塞感が生まれます。

いろんな生き方があるし、いろんな価値観があると教えてあげれば、子どもたちも伸び伸びとした気持ちになり、自己肯定感が高まります。

本書を読むと、現代の日本の過ごし方とは全く違う生活がそこにあるということが分かります。

 

本書はいくつかの短編のエッセイで構成されています。

大きな声では言えませんが、読書感想文で首が回らない人は、その中の一つだけでも読んで感想とすることができます。

各編が4ページ程度です。

気に入った章を読んで想像をふくらませていけば良いでしょう。

オオカミやビーバーやクジラ、川に流れる朽ち果てた木など、イメージが湧きやすいものばかり。

小学6年生の国語の教科書に、じつは感想文の例も載っています。

ぜひ参考にしてみてください。

 

「旅をする本」

この本には都市伝説がかつてありました。

 

海外を貧乏旅行で長い期間を放浪する旅行者(バックパッカー)は、日本語で書かれた本が無性に読みたくなる時があります。

そこで旅先で日本人同士が会うと、お互いの持っている本を交換して、日本語の渇きを潤すのです。

 

ある時、誰かがこの「旅をする木」という本の交換リレーを始めました。

そこで、どのようにしてリレーが続くか分かるように、本が渡ったら、それぞれ巻末に日付けと自分の名前、そして場所を書くことにしました。

 

やがてその一冊の本は、日本人旅行者の間でどんどんリレーされ、世界中を旅することになりました。地球を何周分も回る事になりました。

表紙の題名「旅をする木」も、誰かが「旅をする本」と、一本横棒を加えました。

 

時には、冒険家が極寒の北極へ持って行ったこともありました。

テントの中で凍傷になりかけ、意識が遠くなる中、死の危険を感じ必死で意識を取り戻そうとして本書を読んだこともあったそうです。

 

この話は実話で、そのボロボロになった「旅をする本」は、実際に現物があったのです。

2年ほど前にBSのドキュメンタリー番組として紹介されました。

 

 

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