本の紹介  2018年2月20日|火曜日

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

教養堂の棚からひとつかみ、今回はこちら。

2018年2月の新刊本です。

すでに様々な識者が取り上げられていたので興味を持っていました。

特に塾の先生ブログのうち、国語専門塾の先生方はいち早くこの本を取り上げられていらっしゃいます。

そして長年の実践がこの本でも理論付けされた、と溜飲を下げておられる方もいらっしゃいます。私も末席ながら同じ気持ちです。

 

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子 著

 

とても読みごたえがあります。

そしてこの本が出たことで、私の個人的な疑問も氷解しました。

 

実は2016年の12月に、「読解力」についてプレゼンテーションをする機会がありました。

その時に、プレゼンの初めのエピソードに以下の記事を使ったことがあったからです。

 

こちらは著者の研究チームの2016年11月15日の記事です。

 

 

それまでにも個人的な興味で、「東ロボくん」については注視していました。

まず、東大に合格できるのか、できないのか、という人工知能の可能性への関心。

そして合格できるのであれば、入試の正攻法がデータとして解明されることを意味する、という塾講師としての関心。

この2つでした。

 

そしてこの記事を見た時、ちょっとうれしい気持ちと、ちょっと残念な気持ちとが、何とも言えない感情となって表れました。

 

「読解」が苦手……。

でしょ?

読解って人間にしかできないことなのだ、

という勝ち誇った気持ち。

 

そして「能力に限界」

ちょっとさみしい。

「体力の限界…」といって引退した横綱千代の富士を思い出す。

東ロボくん、あきらめないで、という応援したくなる気持ち。

 

その続きの記事を読んだら、そんなことよりも、これは現在の子どもたちの学力的立ち位置を図らずとも示してしまったようだ、と思い直しました。

 

東ロボくんの苦手な所が、子どもたちの苦手でもあった。

そして、東ロボくんのような機械的な読みをしている子が多い。

 

このような指摘がとても気になりました。

それから1年後に出された本書「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」は、この指摘をとても分かりやすく説明してくれます。

 

簡単に言うと、「AI研究をしていたら、見過ごされていた基本的な教育問題を発見してしまった。」ということになります。

 

さらにAIに関するこれまでのおおまかな流れ、課題点、できることとできないこと、などが書かれ、読解力の低下についての教育の問題点が書かれています。

後半のところどころに情緒的な内容があるものの、AIと教育の2つの課題点の交差点を解き明かしてくれる連立方程式のような内容です。

著者の研究チームが中高生を中心に独自のテスト(RST)を行ったら、教科書の平易な文でさえも論理的に読めていない子たちの割合が多い結果となったということです。

これは正直なんとなく思っていたことでしたが、こうして調査結果が出ると気持ちを新たにします。

 

著者はそれを踏まえて、「小学生の英語教育強化」「プログラミング教育」「アクティブラーニング」などを推進する前に、読解力の向上をすべきだと訴えています。

私も賛成です。

 

「読解力」の向上については簡単に取り組めるものや長期的に取り組んでいくものまでさまざまあります。

教養堂が取り組んでいる内容は、これまでのブログでも書いてきましたが、さらに具体的な内容や実践例なども発表していくつもりです。

 

私はこれまでもすべての教科の基礎基本は国語力にあるという信念がありましたが、この本によってさらにこの信念がゆるぎないものになりました。

 

この本からさらに私の疑問点、もっと知りたい点が出てきました。知的欲求って刺激されればされるほど欲張りになります。

 

・シンギュラリティは来ないにしても、AIが人間の仕事に取って替わることは避けられない。では人間しかできない仕事は、「読解力」以外にどのような学力が必要とされるのか、このAI研究から分かることは何か。

・この研究を踏まえて、大学入試の内容は変える必要があるのか、またはどのようなものが最適と考えるか。

・「読解力低下」の原因は何か。さらに、もともと読解力は高かったのか、それとも実はずっとこの状態だったのか。客観的に測れるものなのか。

 

この研究は今後もさらに続けられるようです。

あらたな研究結果が待たれます。

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