本の紹介  2018年2月10日|土曜日

『世界一「考えさせられる」入試問題』

2018年2月10日の中日新聞コラムに紹介されていたのが、こちら。

 

オックスフォード大学の生物学の入試問題が紹介されていました。

「ユニーク」と紹介されていましたが、日本から見ればの話で、このような総合知が試される入試は日本でも、まもなくやって来るのではないでしょうか。

ただし、イギリスやフランスなどは、哲学史や論理学を高校生でもみっちりやっているので、このような入試問題に慣れています。

日本ではほとんど触れないので、まったく歯が立たないのです。

 

ゲリマンダー的要素

「ゲリマンダー」という言葉があります。

1812年、アメリカの政治家でゲリーという人が選挙に勝つために選挙区の区割りを自ら有利に働くように変えました。

その強引な区割りの形が、溶岩の中に住んでいるといわれる伝説の動物「サラマンダー」に似ているということから、「ゲリマンダー」と言われるようになりました。

 

つまり、前提条件を変えればゲームのルールが変わるのです。

日本の入試制度も前提となる教育内容が変われば、「勉強ができる」定義も変わるでしょう。

そうなればこれまでの制度では正当に評価されてなかった、「ある一群の子たち」がようやく陽の目をみることができるだろうと私はわくわくしています。

教養堂では、そういう子たちが伸び伸びできる塾の環境を整えています。

 

さて、とは言え、このような入試問題はすごく知的なゲームとして捉えれば面白いです。

 

教養堂の棚からひとつかみ、今回はこちら。

 

『世界一「考えさせられる」入試問題』 ジョン・ファーンドン著

 

クイズ形式で読みやすいですし、知的にとても刺激される良書です。

 

日本の従来の教育制度で育った人から見れば、答えがない問題にとてもストレスを感じるかもしれません。

しかし、そこに慣れ、「思考する過程」を楽しむようになればいいのです。

このような形式の問題に対応するための訓練がアクティブ・ラーニングにつながるとも言えます。

ただし、やはり論理だてて説明する作法をまず習得する必要があるのです。

 

では、日本人はこのような思考訓練をしてこなかったのでしょうか?

いえ、しっかりやっていたのです。

そのような伝統よりも、近代以降は西洋文明をインプットする学習にシフトしてきただけの話です。

 

 

究極のアクティブ・ラーニング

分かりやすい例でいえば「禅問答」です。

禅宗の修行の一環として作られたいわば口頭試問です。

これにより修行の進み具合や思考の深さがあらわになります。

ヒントや助言ナシの究極のアクティブ・ラーニングなのです。

 

問:「両手で手を叩いてみよ。音がするな。では片手ではどんな音がするか?」

 

江戸時代に臨済宗の白隠禅師が作った「隻手の声」という公案です。

この問題は非常に難しいです。

底知れぬ思考が試されます。

 

以前、これを授業で取り上げたら、みんな不思議そうに考え込みました。

突然一人、強引に片腕を猛スピードで屈伸させて音を出した子がいました。

全員失笑でしたが、経験論から出発するのも良いでしょう。

 

 

次も初めて聞くと唖然とするような話です。

 

師匠 「あれはなんだ?」

   弟子「カモです。」

 

師匠「どこへ飛んで行った?」

   弟子「わかりません。ただ飛んでいきました。」

 

師匠、それを聞いていきなり弟子の鼻を強くつまむ。

   弟子「痛い!」

 

師匠「飛び去ったというが、カモはここにいるではないか!」

   そこで弟子はすべてを悟った。

 

 

これは一見論理の飛躍に思えるかもしれませんが、実は西洋哲学の観念論とも深く結びつく思考問題なのです。

日本にはこうした知の伝統的な思考が脈々と受け継がれてきました。

こうした伝統的な思考の訓練が復権するには今は良い機会です。

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