本の紹介  2021年5月27日|木曜日

『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』

台湾のコロナウイルス対策はITを駆使したデジタル政策で成果を収めました。

その影の立役者が、デジタル担当大臣のオードリー・タンです。

 

今回の教養堂の棚からひとつかみはこちら。

 

『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』

著者 オードリー・タン

初版 2020年12月1日

発行 プレジデント社

 

 

今、どこの本屋に行っても、ビジネス本の一番目立つのところにオードリー・タンに関する本が4・5種類、平積みになって並べられています。

 

台湾の感染症予防対策は際立っていました。

マスクの配布についても、デジタルを駆使してマスク不足の混乱を未然に防ぎました。

日本でもニュースでよく紹介されました。

迅速な対応、水際作戦、最先端のデジタル政策、とても興味深いです。

 

省庁間の垣根を越えてコロナ政策を指揮したデジタル担当大臣オードリー・タンとはどんな人物なのだろうかと気になって本書を手に取りました。

 

どのような生い立ちで、何を学び、どんな考え方を持った人なんだろう、そしてやはりどんな教育を受けたのだろう、と気になりました。

詳しくは本書を読めば書いてあるのですが、印象に残ったところを挙げてみます。

 

 

氏が11歳の時に父の仕事の都合で1年間ドイツに滞在していました。

1989年6月に起きた「天安門事件」で中国民主化運動がつぶれると、民主化運動を担った学生リーダーたちは国外に脱出しました。

中国国内にいると政治犯として捕まるからです。

ドイツにはそのような亡命者たちが多くいて、氏の父は自宅に呼んで、政治や民主主義についてよく議論をしていたそうです。

 

「中国人には民主主義を成し遂げられるか」という議論などが交わされていたそうですが、その場に11歳のオードリー・タンも参加してその内容を聞いていたというのです。

 

当時、台湾も戒厳令時代が終わり李登輝が総統になり、これから民主化が始まる時代ですから、民主主義を自ら作り上げていくという熱気が高かったのだと想像します。

 

そのような原体験があるので、デジタル社会に民主主義の新しい可能性を氏は見ているのだとわかります。

実際、本書を読むと、氏の民主主義の可能性を説く内容は、瑞々しさが感じられます。

 

また、ヴィトゲンシュタインの論理やと柄谷行人の「交換モデルX」の思想がバックボーンにあり、そこから自分自身のことを「権力に縛られないアナーキスト」と評しています。

デジタルを介しての民主主義との関連として面白い立ち位置だと思いました。

これが瑞々しいと思った理由です。

 

 

氏は15歳で中学校を中退し、勉強は独学の道をあゆみます。

プログラマーとして起業してコンピュータ関連の会社を設立します。

Siriの開発にも携わった後、2016年から蔡英文政権に当時35歳の若さで入閣します。

 

 

最後に私がとても興味深かったのが、本書の後半に書かれたデジタル時代に必要な「素養」についての話でした。

 

科学技術では解決できない問題に対処するためには美意識を養うべきである、と氏は言います。

既存の可能性にとらわれないようにするためにも、アート的な感覚が必要だと。

また文学的な素養も大切で、デジタルの時代になればなるほどこのような素養は重要性を増すだろうと言っています。

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