こんな話  2023年10月25日|水曜日

中2国語 短歌 石川啄木「不来方のお城」を訪ねて

不来方のお城の草に寝ころびて

空に吸はれし

十五の心

 

石川啄木

 

 

中学2年生の国語の教科書に載る、石川啄木の燦然とかがやくエヴァーグリーンの短歌。

「三行書き」という視覚的にも独特な表現方法で、孤高の存在感を放ちます。

 

石川啄木 1886-1912

岩手県 盛岡 出身

享年26歳

その才能が惜しまれます。

 

 

「不来方」(こずかた) とは何だろう?

おそらく岩手県の人でなかったら疑問符がつく言葉です。

 

筆者が中学で習った時には、「不来方」の意味が分からず、自分なりに解釈していました。

 

「不来」だから「来ず」。

つまり誰も来ないような古城で、もはや寂れたような苔むす朽ち果てたお城のことなのだろう。

そんな人里離れた古城に、一人立ち寄って大の字で寝そべっている若き啄木を勝手に想像したものでした。

明治の頃の短歌だから、ちょっと滝廉太郎の「荒城の月」のイメージも自然に入りました。

後で知ったのは、「不来方」は「盛岡」の古い名前であるということでした。

 

昔の教科書にはその注釈が載っていませんでした。

今は親切に欄外に載っているので、そういう誤読はありません。

イメージが広がる誤読も時にはいいものですが。

 

しかし豈図らんや、盛岡城址は盛岡市の街の中心地にあり、近くには官公庁や岩手県の企業が集まっています。

ただその街の喧騒の中にぽっかり一つの森を形成している城跡は、確かに普段は誰も来ず、古城の閑かさをたたえています。

 

なるほど、授業を抜け出した啄木が物思いに耽るには格好の場所です。

 

「不来方」は本当に素敵な呼び名です。

この語源を調べるのも面白いです。

 

旧制中学に通っていた15歳の石川啄木はどんな場所で寝転がって空を見上げていたのでしょうか?

 

 

秋の紅葉が少し始まる頃、少々雨に濡れながら盛岡を巡りました。

盛岡城跡の公園に静かにその石垣を見ることができました。

 

城からすぐ近くにあった旧制盛岡中学校から授業の途中で抜け出すには格好の場所。

石垣の上に石碑があります。

外国人観光客に配慮してか、英訳の短歌も載っています。

 

Lying in the grass of the ruins of Kozukata Castle

My 15 year old heart Felt as if it was being drawn up into the sky

 

 

 

2023年現在、昨年度比で最も多く外国人観光客が増加している日本の観光地は、盛岡市です。

 

これには理由があって、アメリカのニューヨークタイムズ紙に、「2023年に行くべき52か所」(52 Places to Go in 2023)という観光地紹介に堂々の世界2位として盛岡が載ったのです。

「歩いて回れる宝石的スポット」

とあり、保存されている明治・大正時代の建築物や史跡、ジャズ喫茶、カフェなどが紹介されました。

 

 

旧岩手銀行 赤レンガ館

お城からの東側の中津川をこえるとすぐあります。

そして、もう一つの観光名所「もりおか 啄木・賢治青春館」という記念館があります。

こちらも第九十銀行本店の跡地を活用しています。

 

石川啄木も宮沢賢治も同じ旧制盛岡中学校に通っていました。

啄木より10年後輩の賢治。

この2人を紹介する記念館です。

 

彼らが当時見ていたであろう建造物の中でパネル展示を見ながらじっくり見学ができます。

 

盛岡中学校の後輩に捧げた2人の言葉が秀逸です。

 

宮澤賢治は、本当に「らしい」です。

「僕らの賢治さん」といった感じで、まっすぐなんですよね。

熱くて誠実で一人で突っ走していってしまい、大宇宙に連れて行ってくれる感じ。

 

それに対して、石川啄木はそこそこ道に逸れた「はぐれ感」があります。それが妙に現代的でもあります。

これも啄木「らしい」です。

同じ目線で語りかけてくれる友人のような感じが素敵です。

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