勉強の話  2018年3月14日|水曜日

2018愛知県公立高校入試 Aグループ 国語を読み解く

愛知県公立高校入試 Aグループ の入試も終わりました。

 

前回に続き、国語の問題を読み解いてみます。

やはり国語の問題は読み解き甲斐があります。

 

平成30年度 愛知県公立高校入試 Bグループ 国語から

 

大問1 随筆文

『日本の名随筆 別巻45 翻訳』(田中美知太郎 著)から。

 

 

わざわざ40年前の随筆から出題…

筆者はギリシャ哲学のプラトン研究で有名な保守系知識人として知られています。

最初の問題文のことわりに、わざわざ「こちらは約40年前に書かれた随筆である。」と入れています。

まさかネタに困って「出題者」が学生の頃に読んだ本をチョイスした、ということではないですよね。

 

なぜ、わざわざ40年前とことわったのでしょうか。

それは読んでいくと、現代とはいささか違う状況に触れられている箇所があるからです。

 

最後の第6段落で、

「わが国の今日の文化は大体が翻訳文化とよんでいいようなものだと考えられるが…」

という一節からも分かります。これは現在なら「ちょっと待った」というくらいの違和感はあるでしょう。

40年前というと、1978年頃。

石油危機(オイルショック)を脱し、ようやくバブル経済に向かおうとする頃です。

社会学者エズラ・ヴォ―ゲルが日本の経済発展を解き明かした本『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)がベストセラーになった頃で、同時に日米貿易摩擦が問題になってくる時代でもあります。

 

 

今の子どもたちにとっては、例えば日本のアニメなどが海外で高い評価を得ていることは常識ですので「翻訳文化」と言い切られると、あれ?となるわけです。

 

さらに、「映画の題名は原題よりも『情緒的題名』が少なくない。」とあります。

海外の映画の題名を日本流にアレンジしたものは余計な解釈が入るだけに、とんでもない判断や行動のあやまりをおかすのではないか、と危惧しています。当時としてはそれが横行していたのでしょうか。

果たして原題に忠実な方が良いのでしょうか。

 

映画タイトルの名訳

1967年 原題「ボニー&クライド」 → 邦題『俺たちに明日はない』

1969年 原題「ブッチ・キャシディとザ・サンダンス・キッド」→ 邦題『明日に向かって撃て!』

1977年 原題「第三種接近遭遇」→ 邦題『未知との遭遇』

これを見ると、逆にアメリカ映画は題名で売る気があるのかな、と思いたくなりますね。

洋画の原題名よりも、日本の邦題(日本で映画会社が付けた題名)の方が見に行こうという気になります。

日本の情緒的な題名の付け方は、むしろその映画をより深く理解する助けになると思います。

 

 

逆にあちらの方では、坂本九の1963年上を見て歩こう」が、なぜか『SUKIYAKI』という題名で売り出されています。

ちなみにこの曲が日本発の唯一の全米ナンバー1ヒット曲です。

 

 

1933年(昭和8年)公開のフランス映画に『「7月14日」(Quatorze Juillet)』(ルネ・クレール監督)という原題名の映画があります。

「7月14日」と言われても日本ではピンと来ないのですが、当時の映画会社はこれを『巴里祭』(パリ祭)と翻訳(意訳)しました。

 

パリでは今でも7月14日はフランス革命の記念日で祝日です。

この映画はそのお祭りの日にちなんだパリの下町の話なのです。

「パリ祭」とは呼ばれていないのですが、これなんかは本当にパリの感じが出ていますし、名訳だと思います。

そしてそのイメージのままの素晴らしい映画です。

後日談があって、翻訳した人は「ぱりまつり」という意味で付けたようでしたが、日本では「ぱりさい」と呼ばれ定着しました。

 

翻訳文化は翻訳する側の教養も試される

ひるがえって、今日の洋画のタイトルはいささか味気ない気がします。

英語タイトルをそのままカタカナにしたような題名が多いと思います。

森鷗外は原作よりも優れた名訳を生み出したということですが、それはとりもなおさず翻訳する側に文化的素養が高いことを示しており、むしろ良いのではないでしょうか。

 

『ゆえをもって多く学術理義の書を訳せるも、かつて文学の書を訳せることなし。およそ文学の書を訳する、原著者以上の筆力有るにあらずんば、いたずらにその妙趣を戕残するにおわらんのみと。』「兆民先生」幸徳秋水より。

 

実は教養堂では、この「翻訳」について探求する授業を準備しています。

英語の授業の一環ですが、いかに味のある翻訳をするかは日本語の力にもかかっているのです。

 

問題構成

⑴適語補充  選択肢が副詞でした。少しとまどいます。「副詞」のセンスは読書量に比例するのではないでしょうか。Bグループでもそうですが、一番最初の問題に少しまどわせるものを持ってきている気がします。今回は大問3から先に解いていった方がリズムに乗れたかもしれません。

⑵適語補充  本文中の単語から考えさせる問題

⑶内容理解  一文の抜き出し

⑷段落構成

⑸本文の意見 筆者の考えに近いものを選択

 

 

大問3 論説文

『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(井上智洋 著)

 

こちらは逆に最新刊で2016年7月の書籍が出典です。

 

AI関連は避けて通れない

人工知能AI の問題は非常に広範囲に渡ります。

論じ甲斐があるのです。

論じようと思えばどれだけでも出てきます。

これまでもそうでしたが、AI関連の論説文はこれからも入試では一大分野としての地位を占めることでしょう。

 

問題構成

⑴内容理解 理由の選択

⑵指定語句を使った80字の要約文 この問題が一番の山場でした。

⑶接続詞補充の選択

⑷生徒の感想文から書かれていない考えを選ぶ

⑸適文補充

⑹大意把握の選択

 

2つの大問から、両方とも生徒の感想文を載せています。

これは「テキスト」に基づいて自分が考えたことを述べるという形です。

つまり、書かれてある内容に「批評性」を持って臨むということを意味します。

今回の出題のテーマがあるとしたら、そうした「批評性のある読み方」を促している感じがしました。

 

 

大問3 古典

『春秋左氏伝』から。

 

もとは漢文ですが、その書き下し文として出題されました。

民が政治を批評するのをやめさせるのではなく、自分の師と思うべきものという内容です。

 

問題構成

⑴現代語訳  反語「どうして~だろうか」の出題。

⑵語句の意味選択

⑶語句の意味選択

⑷内容把握

 

第2問の「威を作して」がどういう意味か、という問題は類推するしかありませんでした。

直後の「然れども猶ほ川を防ぐがごとし。大決の犯す所は…」の比喩を念頭に考えると選択ができます。

また「威」という字を「権威」「威力」「威勢」という熟語がイメージできればさらに正解率はあがります。

 

以上、愛知県公立高校入試問題をもとに勝手に読み解いてみました。

KEYWORDS

お問い合わせ

top