勉強の話  2018年12月25日|火曜日

西行 鼓ヶ滝

伝え聞く 鼓ヶ滝に 来て見れば

沢辺に咲きし たんぽぽの花

西行

 

落語、講談の方で、「西行鼓ヶ滝」という演目があります。

もともと能の「鼓滝」で、世阿弥 作とも言われます。

 

 

歌人、西行法師が摂津の国の名所「鼓ヶ滝」を訪れました。

そこですらすらと詠んだ自分の和歌を自画自賛していると、急に辺りが暗くなりましたので、あわてて山中にある人里離れた民家に泊まることになりました。

そこに住んでいた、おじいさん、おばあさん、孫娘の3人に、自作のその歌を披露したのですが、それぞれ手直しされてしまいます。

はじめに、おじいさんが手直しをしました。

 

音に聞く 鼓ヶ滝に 来て見れば

沢辺に咲きし たんぽぽの花

 

滝だから「音に聞く」の方が良いわけです。

次に、おばあさんが手直しします。

 

伝え聞く 鼓ヶ滝に 打ち見れば

沢辺に咲きし たんぽぽの花

 

「鼓ヶ滝」の「鼓」だけに、「打ち」見れば、の方が合うわけです。

最期に登場した、孫娘。

 

伝え聞く 鼓ヶ滝に 来て見れば

川辺に咲きし たんぽぽの花

 

「鼓」は「皮」をあつかうもの。

「さわべ」ではなく「かわべ」の方が調べが高いのです。

 

素人に指摘された西行は初めムッとするのですが、手直しされたものが自分で納得できるほどの出来栄え。

手直しされた歌を詠んでみれば、

 

音に聞く 鼓ヶ滝に 打ち見れば

川辺に咲きし たんぽぽの花

 

すでに西行が詠んだ歌の原型をとどめてはいないのですが、元の歌より格段に良くなっているのを認めざるをえず、西行は自分の修行の足りなさを自覚したのでした。

 

 

ふと気づくと、あたりは昼のまま、もとの鼓ヶ滝におり、今のが夢だと気づきました。

あの3人は、和歌の神様の化身だったのです。

 

このお話、短歌の授業の導入に一番ぴったりな気がします。

落語、講談の方では、和歌の三神が、それぞれ上の句、中、下の句と一つずつ手直ししていく様子が、とても分かりやすく演じられます。

言葉一つ変えるだけで、なるほど歌が生きてくるのです。

 

おすすめは、講談では神田松之丞です。

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