こんな話  2018年6月3日|日曜日

子どもとのちょっとした会話から流行を学ぶ

流行の発火点

塾講師をしていると、今流行っている、もしくはこれから流行りそうな、話題や現象を敏感に捕まえることができる。

授業後にお車のお迎え待ちで少し時間が空いた時にちょっとした話を聞く。

 

LINEが世に広まるよりも前の頃に、高1女子が「もう今はほとんどメールのやり取りしなくなっちゃった。」と言っていた。

じゃあ、何で連絡を取るの?というと「ライン」だと言う。

 

ライン?

ドナウじゃなくて?

 

それから2年くらい経って急速にLINEは一般的に浸透していった。

 

つんく♂のヒット論

「モーニング娘。」についてプロデューサーのつんく♂さんは、まず「クラスに1人か2人しかいないおしゃれな中2の女子」に浸透するように狙いを定めていたらしい。(『一番になる人』つんく♂著)

その後、彼女らが匂いを嗅ぎ分け騒ぎ出したら、都会の高校1年生が拾い、高2、高3と広まり、地方の高校生に伝播する。ようやく大学生、OLが気づき始める。ちなみにブレイクしてしまったら、当の中2は自分たちが火をつけたあとはもう興味を失っているのだという。

 

 

たしかにビートルズでもクィーンでも最初はティーネージャーの女子から流行った。

クィーンは日本の10代女子が発火点だった。彼女らが「発見」したと言ってよい。

最初は大人からキワモノ扱いされたが、そこからイギリスを代表する世界的なバンドに変貌した。

 

今流行っているものを子どもたちに聞くコツ

子どもたちと流行の話をする時は、もうこちらの立場を忘れて、「ぜひ教えてください」という姿勢で聞く。

そういう時は理想的な生徒のように私は傾聴する。

「全く分かんない」という体で行く。

そういう会話の時の立場の逆転現象も楽しむ。

 

実は、子どもたちが自分の好きなことを全く知らない人に説明をするというのは、非常に国語的な能力を伸ばすことにつながる。

いわばプレゼン能力である。

 

 

だから流行の最先端の話題でも、教えてもらうスタンスで会話をするので困ったことはないといえるかもしれない。

 

 

文化のクロスオーバー

しかし、大人が時には知っているつもりになっていると、先行しすぎて……沈む。

 

 

中3生「先生、MIWAは聴いたことありますか?」

 

 

 

 -私「うん?ミワ?あ、美輪さんね!」

 

 

中3生「『ヒカリへ』とか。」

 

 -私「うーん、そんな歌うたってた?」

 

中3生「紅白でも歌ってましたよ。」

 

 -私「やっぱり、『ヨイトマケの歌』でしょ。」

 

中3生「ヨイトマケ?」

 

 -私「知らない?代表曲ですよ。泣けるよ。」

 

中3生「泣けるんだ。」

 

 -私「あと『愛の賛歌』とか『黒蜥蜴の歌』とかね。」

 

中3生「黒とかげ!」

 

 -私「『黒蜥蜴」という劇の歌で、舞台で主演をずっとやっていましたよ。江戸川乱歩原作 三島由紀夫脚本でね。」

 

中3生「劇もやっていましたっけ?」

 

 -私「もちろん。あ、その時は『美輪』って言わなかった。」

 

中3生「MIWAじゃない?」

 

 -私「そう。マルヤマ。…丸山明宏。」

 

中3生「アキヒロ…。」

 

 

途中でこの話題、噛み合っていないとうすうす気づいているものの、ここは押し通した。

たしかにMIWAという時はアクセントが初めにあった。

美輪さんの場合はアクセントが後ろにある。

 

やはり、流行りものの話題は、子ども達に先を譲る。

 

 

年頃の子を持つ親御さんへ

ここで年頃の子を持つ親御さんへ。

男の子、女の子に関わらず。

子どもが関心があったりハマったりしているものは、それを否定せず、それがどういうものなのか、じっくり聞いてあげていただきたい。

流行っている、ハマっているものには、よくよく聞くと普遍的なそれなりの真実がある。

 

「今」流行っているものではなく「昔」流行っていたものにドハマりする子も、今はたくさんいる。

YouTubeの発展により、時系列が水平になっている。

だから、例えば戦後に流行った「笠置シヅ子」の話題でもすぐアクセスできる。

さらに、流行っていなくても、自分だけが分かる世界にのめり込む子もいる。

志賀直哉が書いた「清兵衛と瓢箪」という小説には、そうした子どもの世界の感性と、分からない大人との確執が書かれている。

 

 

中には大人が眉をひそめるものもなくはない。

しかし今世界に誇る日本のカルチャーの多くは、メインストリームではなく、カウンター・カルチャーもしくはアンダーグラウンド・カルチャー(アングラ)と呼ばれた頃から拡大したものである。

そしてそれは一見全く新しいものに見えるかもしれないが、実はすでに親御さんがかつて熱狂したであろう色々なものが、形を変えているだけに過ぎなかったりもする。

 

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