本の紹介 2022年2月7日|月曜日
『複雑化の教育論』
著者の内田樹先生の著書はよく入試問題に取り上げられます。
大学入試をはじめ高校入試などにも出題されます。
ご本人もおっしゃっていますが、大学入試、特に国立大学の入試に出題されると、それが国語の各種問題集にも引用されていきます。
教養堂の棚からひとつかみ、今回はこちら。
『複雑化の教育論』
著者 内田樹
初版 2022年1月28日
発行 東洋館出版社
新型コロナ蔓延の中での教育についての考察
複雑化することで成熟できること
オンライン授業と対面授業の本質的な違い
キャラ化する子どもたち
なるほどと思いながら一気に読めました。
と同時に、塾講師としての本能からか問題作成者の視点でも読んでしまいます。
「このあたりから出題するといい問題できそう。」
「この語句説明を字数制限の記述式で。」
「この接続詞を空欄にして選択問題に。」
「筆者の主張する内容を選択問題で。」
……
これでは落ち着いて読めやしません。
職業病です。
著者は大学の名誉教授でありながら合気道の師範でもあります。
神戸に「凱風館」という道場・学塾を主宰しています。
そこで語った講演の模様をまとめたのが本書です。
口述によるものですから読みやすく、随筆やエッセイとしても読めます。
「誰も言っていないこと」
「へんなこと」
をあえて言うつもりで語ったという教育論なので、面白い切り口で出題できそうです。
高校入試や私立中学入試でも出題がしやすいのではないのでしょうか。
校舎が人を作る
神戸女学院大学の建築を設計したアメリカ人建築士ウィリアム・メリル・ヴォーリズについてのお話が面白かったです。
長年、内田先生はそこの学長をされていました。
実は私も教養堂を開塾するにあたり、理想の教育の場としてずいぶん古今東西の学校の建築設計について考察をしたものですが、日本では特にヴォーリズの建築物には惹かれました。
新型ウイルス蔓延下での教育ではオンライン授業・リモート授業の可能性が広がりました。
しかし従来の対面授業と比べての教育効果についての考察は必要です。
オンライン授業の可能性を考えることは、実は対面授業の可能性を考えることでもあります。
その示唆としての学問の場としてのヴォーリズの建築思想はとても面白いです。
「オンライン」ではなく、身体から発する音が空気の振動によって直接聴講者に届くことの意義が、学びの場にはまた必要であることが分かります。
「校舎が人を作る」ことの意義を再確認いたしました。
本書でさらっと言及されていることを深掘りするとかなり面白くなります。
ビジネスマンに学校教育について語らせてはいけない
これには全面的に賛成です。
うんうんとうなずき過ぎて、首が痛くなるほどです。
実は経済面から見た教育論の本もまだ書店で売られていますが、机上の空論の域を出ません。
教育の目的は「有用な知識の獲得」と「格付け」だと多くの人は信じている。
示唆に富んだ言葉の数々。
教養堂の理念と指針についての方向性を図るうえで、本書は「現在地の確認」ができるものでした。
本書についてもっとご紹介したいのですが、
お時間がいっぱいいっぱい……
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