本の紹介  2018年4月9日|月曜日

『社会のしくみが手に取るようにわかる哲学入門』

教養堂の棚からひとつかみ、今回はこちら。

『社会のしくみが手に取るようにわかる哲学入門』萱野稔人 著

 

 

著者はたまにテレビでもコメンテーターとして出演される40代の哲学者です。

NHK BSプレミアムの「英雄たちの選択」 という歴史番組でもよく出演されています。

ちなみに愛知県岡崎市のご出身ということでした。

テレビでの分かりやすい解説のイメージがあったので、こちらの新刊本を手に取りました。

また、装丁が白地に黒というシンプルで教養堂と同じようなデザインも後押ししました。

さらに題字の書体もデザイン的な明朝体もなかなか味わい深いです。

 

この本は現代におけるさまざまに論争される問題点を、わかりやすく論点を整理して、哲学、歴史のような大きな構造として解説しています。

20ほどの現代の問題点を挙げていますが、その中でも興味深く私が読んだものを挙げてみますと、

 

「権力の民衆化について」

「中央銀行とは何か」

「なぜ日本のポストモダン思想は不毛だったのか?」

「本のアウラが消えていく時代」~読書人口が減るとはどういうことか~

「東アジアのパワーバランスの変化から日韓関係をとらえる必要性」

「中国における反日ナショナリズムの逆説について」

「民主主義の限界とは何か?」

「憲法改正における哲学的含意について」

「日本にとって食糧危機がひとごとではない理由」

 

など、ここ10年ずっと論じられてきている問題点を分かりやすく書かれています。

世の中の動きに関心がある高校生なら、この本を切り口として考えてみると良いかもしれません。

 

ちなみに「中央銀行」のところでは、「貨幣論」を分かりやすく触れながら、いかに通貨が国家と密接なつながりがあるかを歴史的経緯とともに説明されています。

これを読むと「仮想通貨」は通貨としては不十分な存在であることがよくわかります。

 

新聞やニュースではどうしても短期的な視点しかわからないのですが、世界の歴史的な動きから見ていくと、非常に分かりやすいことがあります。

また、著者の姿勢に現実的な視点が感じられます。理想論や感情論ではなくリアリズムに依拠した観点がありましたので、読後感が「重く」はなかったです。

つまり「どうすべきか」という観点ではなく「そもそもどのようなしくみなのか」という観点から出発しているので、論理的に「サクサク」読めました。

 

哲学の二つの論点 『当為論』と『存在論』

 

筆者が書いていることには、「哲学には二種類あり、当為論と存在論がある。」とのことです。

 

『当為論』は、「何をなすべきか」を考えていくこと。

『存在論』は、「それがどのように成り立っているのか」を考えること。

 

そして「何をなすべきか」を考える『当為論』の前にまず「どのように成り立っているのか」を考える『存在論』をまずは進めるべきとの立場に立っています。

 

そこでこの本では『存在論』を現代社会の問題点に応用して明らかにしています。

ですから社会の仕組みを概念的にとらえていく思考の訓練がこの本でできます。

 

ある問題点を論じていくことの一つの思考法として『存在論』を応用するのは、いろいろな場面で使える論理的な思考方法だと思います。

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