本の紹介  2018年6月26日|火曜日

『勝負哲学』

日々、勝負の世界に身を置く人の考えていることを覗いてみたくて、この本を手に取りました。

 

 

 

教養堂の棚からひとつかみ、今回はこちら。

 

『勝負哲学』 岡田武史 羽生善治  共著

 

サッカー日本代表を2度ワールドカップで指揮した岡田武史元監督と、先ごろ国民栄誉賞を受賞された将棋の羽生善治名人。

どちらもすごく興味がある方なので、迷わず手に取りました。

2011年10月の出版ですが、普遍的な内容が語られているのでいつ読んでも良い本です。

 

塾を主宰する私にとって、とても興味深い箇所をご紹介します。

 

結果が出ない時

羽生:やるべきことをやっているのに結果が出ない。こういう人は力が外へ発揮されない間、その力が内に蓄積されていることが多いからです。

 

ミスについて

岡田:サッカーはミスの競技ともいえます。小さなミスは、それがたった一度の、じつにささいなものであっても、全体の流れをガラリと変える大きな傷になってしまうことが多々あります。状況が悪いと動きたくなりますが、そこは苦しくても、じっとがまんの子を決め込む。すると、流れが好転することがあるんです。

 

自主性について

岡田:もちろん、ついあれこれいいたくはなりますが、そこはグッとこらえて、指示をあまり早い段階では出さず、選手がみずから気づくのをじっくり待つんです。人の能力を「引き出す」ためには、教えすぎるよりも教えすぎないほうがずっと効果的でしょうね。

 

岡田監督が率いたサッカー日本代表チームはおそらく日本の最高レベルのプレイヤー集団ですが、それでも選手の自主性については監督がまるで学校の先生のように考えて指導している姿が思い浮かびます。本書では具体的に、選手が自主的に動くための指導者のアドバイスが語られています。ここで監督が実践した選手へのアドバイスは、塾の指導でも大変有効です。

 

集中力を高めるためには

羽生: 教育関係の方からときどき「子どもの集中力を高めるためにはどうしたらいいですか」といった質問を受けるんですが、集中力だけを取り出して単独で鍛えることはできないと思うんです。子どもの集中力を養いたかったら、興味をもてること、打ち込めるものを見つけられる環境をつくってやることが大切なんじゃないでしょうか。

 

羽生名人のこの意見、とても共感します。

 

将棋とサッカーでは個人競技と集団競技、頭脳ゲームとスポーツなどフィールドが違う世界ですが、その対比からの二人の達人の意見がすごく参考になりました。

 

サッカーと将棋の教育

岡田監督が言及した、日本人は指導者の指示を忠実に守ろうとしてしまう、もっと言えば、指示を守ることで自分の責任を回避しようとしてしまう習癖がある、という指摘は重要です。スペインのサッカーは16歳まで徹底的に型を覚えさせ、そこから柔軟な個人プレイに移行するのだそうです。現在、日本はその逆なので、岡田監督は型から覚えさせる取り組みを、今治で始めています。

 

羽生名人は教育の肝は「関接アプローチ」にあるのでは、と語っています。将棋界の師弟関係から「教えない教え」という極意に触れています。教え込むと結局その後の自由な成長が望めなくなるのだそうです。

 

本書は一見難しい言葉は使っていないのですが、語られる内容はとにかく達人レベルなので、何回読んでも新たな発見のある本です。

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